外因による死(総論) 法医学

外因による死と法医学

死の原因が分からない場合には、 大きく分けて心筋梗塞などの内因による死と、 外因による死に分けられている。 特に、ドラマなどで扱われるのは、この外因の死である。 外因による死には損傷・窒息・中毒・異常環境があり、 損傷には鋭いナイフのような物による(切創)、 アイスピックなどによる(刺創)、斧などのように重量を有する凶器による(割創) 、そして近年増加している(銃創)などのようにいくつかの分類がある。

例えばナイフなどの鋭いものでは、その方向や犯人の利き腕 などが分かる場合があり、出血の状態から生前・死後などの判定も行われる。 また、近年は銃器などの犯罪も注目されており、粉塵の付着や、方向、 貫通の程度などからその銃器の種類、方向、距離、そしてそれが自殺なのか、それとも 他殺であるかの判定も行われる。

よく映画などで行われる硝煙反応は重要な検査の一つである。

窒息は酸素が脳・細胞まで到達しない ために起こるもので、手などによる(扼死)、 ロープなどを利用して自分の体重による(縊死)、自分以外による(絞死) に分けられてそれぞれ名前が付けられている。 窒息は流動性の血液や眼球の点状出血など急死の所見と同様の所見が観察され、ロープなどに よる窒息の場合には頚静脈が圧迫され、顔面部のうっ血がみられる。 窒息は外力によるものや、異物、酸素欠乏など様々な原因があるので注意が必要である。


他には中毒や異常環境などがあるが、ここでは中毒について簡単に触れる。

中毒は一酸化中毒がもっとも身近で発生頻度も高いので有名である。 一酸化中毒は不完全燃焼によるものなどがあり、 酸素の250倍もの結合能力があるために、体内に酸素が行き届かずに死に至る。

フグ毒。テトロドトキシンによるものなども 問題で、これはフグの食糧となる海草などに由来している。 また、青酸カリは細胞の中のミトコンドリアの働きを阻害する ために死に至ることがある。これらのように幾つかの中毒を簡単に紹介 してきたが他にもパラコートを代表とする農薬や、様々な薬品・毒などがある。 厳密にいえば全ての薬が副作用を起こす可能性があるので、 医師は患者さんの既往歴を確認したりしてリスクを最小限にとどめている。

死因にはこれら以外にも飢餓死、日射病・熱射病による死、 凍死(ピンク色の紫斑は有名)、熱傷死(9の法則が有名。面積を元にした重症度判定)、 焼死・爆死など様々な原因がある。 また、外因子と内因子の鑑別が難しい場合もある。 例えば、水死体が発見された場合、生体か死後で沈められたのか 事故・病気などによるものなのかなどである。 これらの鑑別の一つとして肺などの組織中の植物プランクトンの 有無を確認する方法などが用いられている。


法医学