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担当:長官
超常現象と歯の意外な関係!!
序章.歯の不思議

「脊椎動物では、歯は生命にとって最も 本質的な器官であり、歯を見ればその個体の体制の 全てが分かる」(Georges Cuvier 解剖学・古生物学者)

歯は実に不思議な器官である…、 この言葉は解剖学者にとどまらず、 芸術家を含め、歴史上の様々な人々が残している言葉である。 現在の野生動物のほとんどは、 歯が無ければ死んでしまうといわれるように、 ヒトにおいても歯が無いと、様々な悪影響を及ぼす。 食べる楽しみが無くなったり、 発音、顔の表情、顎、全身の骨格の 変形など様々な影響を及ぼし、 近年は歯の疾患と、心疾患・糖尿病の関係など 全身の疾患との関係も注目されている。 歯は骨に比べて無機質が多く、長い間残るので 人類の起源に迫ったり、白骨化した死体から身元を 割り出したり(関連ページ「骨が語る真実」)、 「法医学」 「法歯学」 などにも応用されている。 今回は、こんな不思議な歯のミステリーを紹介してゆく。

一章.歯の起源

歯の起源は一体何だろうか。 確実に分かっているわけではないが、 Hertwig(1874-76)、Lison(1954)などによると 軟骨魚類であるサメ、エイなどの体表の甲皮が 口腔粘膜に移動したものであるという。 つまり、歯の起源は体表であると考えられているのだ。

二章.歯の機能と目的

「歯の数は基本的に高等な生物ほど少なくなっている」

そのため、歯の数を調べることによって 大体の進化の段階を推測できる。 また、ダーウィンの進化論では自然淘汰によって その環境に適した者が生き残ってゆく考えられている。 そのため、歯もその目的に合った形をしている。 歯の主な機能は摂食であるが、イノシシなどでは闘争という 働きもあり、発音、そしてヒトでは審美的にも影響を与えている。

魚類、爬虫類
魚類、爬虫類では主に歯は獲物を"捕らえるため"に 働いている。そのため、捕獲に適した形をしており、 歯は同じ形(同形歯)をしており、 内側(咽頭側)に向かって向いている。 しかし、エイなどのように貝類を主として食べている 場合などは例外となっている。

哺乳類
ヒトを含め、哺乳類は単に獲物を捕らえるだけではなく、 歯には様々な働きがある。 働きによって4つに分けられており、歯の形も異なっている(異形歯)

「捕らえる(切歯)」「噛み切る(犬歯)」「噛み砕く(小臼歯)」「すりつぶす(大臼歯)」

また、肉食動物は獲物を噛み切るために犬歯が発達しており、 草食動物は切歯(門歯ともいう)はノミ状になっており、 臼歯はすりつぶしやすい形になっている(例外もあり、反芻動物は上顎切歯が欠如している)、 また、オットセイなどの魚肉食動物はすばしっこい獲物を捕らえるために 上顎切歯がニ咬頭になっており、臼歯は円錐状になっている。

三章.歯の支持組織

歯を支える支持組織は主に以下の四種類に分けられている。

繊維性結合(軟骨魚類)
蝶番性結合(軟骨魚類、両生類、爬虫類)
骨性癒合(ウナギ、アナゴ、ヘビなど)
釘植(ヒトなどの哺乳類、ワニ)


上記で、特に爬虫類であるワニの歯の支持組織が釘植(骨に歯が埋まっている状態) あるということは興味深く、ワニの骨を用いた捏造などを見抜く"キー"になる。

四章.歯の交換様式

ヒトの乳歯、永久歯を考えれば分かるように歯は交換されることがあり、 サメの歯はすぐ外れ、また生えてくるということは有名だ。 魚やワニなど、生涯を通じて数回〜数十回生え代わる歯を多生歯 といい、2回生えることをニ生歯、1回の場合には一生歯という。 また、高等な霊長類になるほど後方にある大臼歯の萌出が遅いと考えられている。

最終章.歯という器官

「進化に伴い下顎角は上を向く」
「切歯などの前歯のほうが進化的に古い」
「歯根があれば哺乳類、無ければ爬虫類などの哺乳類以外の動物」


歯の特徴についてその一部を簡単に紹介してきたが、 このように様々な動物の特徴を比較して研究する学問は 比較解剖学と呼ばれている。 また、ここに紹介した以外にも比較解剖学と歯には様々な特徴がたくさんある。 今回は、その中でもその一部である歯について紹介したが、 さらに大きなスケールである頭蓋骨、あるいは骨全体の特徴を比較することによって どのような動物であったのかさらに詳しく推測することが出来るのだ。
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